月光

いつものように外で立小便をしながら見上げると
今夜もお月様がこっちを見ている
ちっぽけな妄想や打算や
けちな嘘や言い訳もすべて
お見通しで何も言わずこっちを見ている
もう何年も何十年も何も言わずじっと見ているだけ


本当に伝えたいことは何だろう?
幾千幾万の言葉を費やしても伝わらないことが
ほんの一瞬でも伝わったのならば
それだけでいいのだ
それだけで満ち足りているのに
また新しい妄想を産み出し胸を掻きむしる


お月様よ
無言の愛は
やさしくて
ひどく苦しい

half

目で見えるものがすべてじゃない
どころか
目で見えるのはほんの一部
だけど
だけど見たい
触りたい
嗅ぎたい
聞きたい
味わいたい


遠くにいても
すぐ近くに今日も昨日も一昨日もその前の日も
いられるのに
だけど
だけど会いたい
話したい
笑いたい
泣きたい
感じたい


ずっと何万年も探してたことに
たどり着きたい
また次の世から
何万年か探し続けるとしても

中道

医薬品と煙草と、どっちが体に悪いか?
それはあきらかです。
スーパーに売ってる食料と酒と、どっちが体に悪いか?
それもあきらかです。
病院で検査するのとしないのと、どっちが体に悪いか?
それは言うまでもありません。


前者は人間の悪知恵、後者は自然。
まあでも後者にもいろいろ不純物が混じっていることが問題の本質なのです。
そして前者をまったく必要としないで生きることも相当困難だと感じます。


だから中道を行きましょう。
それが仏であり、タオでもあるのだから。

ありがたい人生

時給三百円の人生だ。
かつて八百円や千円のこともあったが、そのときは零円かマイナスの歌をうたっていたから均せば三百円だった。
いまはひたすら三百円の農民だ。
であるけど、おかげさまで元気だからありがたい。


そういえば昔、NPOで時給三百円くらいで働き倒して、かつ歌もうたっていたから、そのころは均せば百円か二百円だったろう。
寝る暇もなくて、頭は狂うし十二指腸潰瘍で辛かった。
ということは気力と体力さえあれば、いまの暮らしでもうたえるということか。
狂わなくて潰瘍もできない自信がついたら、歌をうたおう。


でもだけど、懐に残るのは零円かマイナスでもライブのチケットやCDの売り上げを合計したら結構な金額になるだろう。
いろんな人が買ってくれたのだ。
時給千円や三百円の中から貴重なお金で買ってくれたのだ。
いまも野菜を買ってくれる人がいる。
なんとありがたい人生だろうか。


せめて五百円くらいになったらいいなというささやかな夢はあるが、
これからも世のためにならない野菜や歌を売ってありがとうありがとうと云いながら、
死ぬまで生きていかれたらそれ以上望むものはない。
明日も早いし今日はもう寝よう。
だけどよ、明日起きたらそのときは今日になってるんだし、
今日しかないのだ。
今日しかない。

まるでまるい

イルカに乗ってどこへ?
たどりつきたいわけじゃない
季節みたいなもんだ
春夏秋冬、夏秋冬春、秋冬春夏、冬春夏秋。
順序はあるけど前後はない
まるで初めてのように何度も笑う幼子
やがて分別と屈託にまみれて
気づいたときから必死で洗い落として
まるで初めてのように何度でも笑って死ぬる


いつかイルカに乗るべきことを忘れたとき
ぼくらイルカに乗っているだろう


まるで初めてのように笑えるだろう

しんくろにしてい

昨日と今日に脈略などない
明日の天気は誰にもわからない
しんくろにしてい?


昨日は池袋にギタアを見に行ったり
渋谷の単館映画館でデートしたり 
しんくろにしてい?


今日は吉祥寺で喧嘩したり
高円寺の悪の巣窟で発狂したり
しんくろにしてい?


明日は国分寺で食い逃げしたり
沖縄のジャングルで朝露に濡れたり
しんくろにしてい?


日日是好日
月がまるくて今日も一日何事もなし
しんくろにしてい?


楽になりたければ
これをやったら楽になれるのではと
思われることすべてを
やめればいいのだ


ところでしんくろにしてい?
何ひとつ無駄ではなかったのなら
いま誰かが誰かを殺す刹那
日日是好日と言えるのか?

アナーキー主義


「悪気はなかったんだ…」
そうなんだ、みんな悪気はないんだ。
なのになぜ、世界中戦争だらけなんだ?


煙草は体に悪いとか、
温暖化の原因はシーオーツーですとか、
嘘ばっかりだ。政治的なでっちあげだ。


「悪気はない」「よかれと思って…」
そこからすべて問題は起こる。
「よかれ」と思うためには、悪者をでっちあげる必要が生じる。
政治的な思考が生まれ、思考が思考を生み、混乱ばかり起こる。


どうだっていいじゃないか。
地球の資源の心配をするより先に、人間のエネルギーの無駄遣いをやめるべきだ。
いいか、きみは決して特別によい人ではないんだよ。
それがわかればこの世は極楽。でもあり、修羅でもある。