禅蔵かるた<前編>

青木研治という詩人が編集発行する「ハッピーターンナイトつうしん」という月刊小冊子がありまして。
ハッピーターンナイト」というイベントと連動していて、その詳しい説明はこちら→http://www.h2.dion.ne.jp/~aoken/ にまかせるとして、わたくし、去年の6月から連載させていただいてるの。
『いろはかるた』をね、「い」から始めて短歌で作ってくという4年がかりの壮大なプロジェクトなのですよ。
詩やらエッセイ満載のフリー冊子は、ライブハウスやカフェで入手できるみたいだから、見かけたら是非手に取ってみてくださいませ。


★☆★


「い」
行ったきり
帰らぬ人の背中には
天使の羽の
刺青があるの


「ろ」
ろくでなし!
罵る声は遠く
瞼にライムライト
悲しげな顔


「は」
剥がれ落ち
はらはらと舞う空の子ら
きみの肩に触れて
ひかりとなる


「に」
虹を見た
瞳(め)で見ているの?
遥かなる夕立の街が
透けて見えるの?


「ほ」
星が鳴る夜には
ぎゅっと手を握り
地球に
振り落とされないで


「へ」
へし折ってくれてやるから
この腕を
もう泣かないで
と言うだけの夜だった


「と」
問うひとよ
十一月の雨の夜は
抱きしめたいのだ
理由などない