文明

21世紀の詩人は歩きながら親指で書く。
星がきれいだね。月がきれいだね。スキップしながら遠まわりの帰り道。なんて時代もあったものだが。
困るのはなかなか家に辿り着けないことだ。
21世紀の詩人は記憶力が極度に悪いので、帰ってから思い出しながら書くなんて芸当はできないのだ。
待ち合わせ場所で1時間待っても来ないし。外にいたんじゃ連絡のとりようもねえ。なんて時代もあったものだが。
21世紀の詩人は検問をかいくぐり、知らない街で迷子になりながら、時々立ち止まって夜空を見上げ、緊急連絡には迅速に応え、且つ、歩きながら親指で書く。