雪子さん

新宿某ネット喫茶で朝を待つ。
朝一番で羽田へ向かうため。
大往生の雪子さんに会いに行くため。
5人の孫のために五十円玉を貯めてくれてた雪子さん。
そいつを一枚ずつ握りしめて駄菓子屋へ走った。
プロレスが好きだった雪子さん。
猪木や馬場を応援してた。
でっかい丼で飯を食ったダンディな爺さんに先立たれて二十年。
窓から自分の家が見える病院で痴呆は年々ひどくなって。
時間の海を自由に泳いだ雪子さん。
明日には体ごと空を飛ぶだろう。
2時間ばかり目を閉じよう。
空から降ってくる五十円玉をちゃんと拾えるように。