鎮魂のための花束

とてもダメな人であるから、友情と愛情の持ち合わせもあんまりないのだけど。
少しはあるから心配するな。大丈夫、痛くないから。
騙されても、非難されても、どつかれても、笑って世界を照らせ。
あ、螢だ。
おまえは噴水のそばで酒瓶叩き割って血を流していたよなあ。
おまえはトレンチコートいつも着てたよなあ。
おまえは飲み込んだ指輪を糞ほじくって探しだしたよなあ。
おまえは置き手紙残してどこにもいなくなっちまったよなあ。
あ、川の匂いがする。
一瞬でも幸せだったのか?
あの夜に嘘偽りがなかったのなら、それでいいじゃないか。
泣けるならいい。眠れるならいい。
最後の夜、高円寺から中野まで歩いた、あの娘はどうしてるだろうか?
最後の手紙を破ってしまった、あの娘はどうしてるだろうか?
向日葵を抱いて新宿の路上に横たわっていた、あの娘はどうしてるだろうか?
待ってると言った、あの娘はどうしてるだろうか?
陽の光の下で、幾千の螢が身を焦がしている。
闇を照らす音楽が、何度も何度もリフレインしている。
なんであのときロフトから飛び降りたのか?
なんであのとき素っ裸でベランダにいたのか?
なんであのとき窓にぶらさがっていたのか?
なんであのとき車を止めたのか?
とにかく。今日まで生き延びたすべての人と死んでしまったすべての魂に乾杯。